ステムベアリングをアンギュラ玉ベアリングに交換 (2)


続いてステムシャフトに新品のベアリング内輪を圧入します この圧入方法もステムベアリング交換に関するいろいろなサイトでは 「 たたき系 」 で対応されていますが、私は少しでも力を使わず、あわせて特別な工具や器具を使わずに、そこらにある物やあり合わせの物で圧入できないか考えてみました



前回のステムベアリング交換から構想5年・・ ( ←角川映画かいっ ) 思いついたのが、前回のベアリング圧入にも使った塩ビのパイプ、それとホームセンターで売っている鉄の棒にネジを切った物、そして角ワッシャの組合せです 参考までに塩ビパイプの寸法は、外径38mm 内径31mm 長さ275mmです





手順としては、ステムシャフトにダストシールとベアリングの内輪をセットして塩ビパイプをくっつけ、ステムシャフトの中心穴にネジを切った鉄の棒を通します
そこへ角ワッシャをかまして両端にナットを付け、ステムシャフトをはさみ込む形にします 角ワッシャには力がかかりますので2枚重ねにされるといいでしょう




上の画像をごらんいただければ、あとの作業はご想像いただけますね ナットに目がねレンチなどをかけて締め込むと、パイプがベアリング内輪を押し込んで圧入してゆく、という仕掛けです




ひとつ前の画像では、わかりやすいように目がねレンチ1丁をかけていますが、ねじ込んでゆくにつれてレンチの回りが重くなってきますので、目がねレンチに短い鉄パイプをかぶせて回すと作業がはかどります

ところでこの方法…私は最初は 「 ナットを回したぶんだけ、つまりネジの進んだ分だけベアリングも押し込まれる 」 と思っていたのですが、実際はレンチを7〜8回まわして締め込みが重くなったところで 「 バキーン! 」 と大きな音がして5mmぐらいベアリングが押し込まれます  おそらく、ナットを締め込んでゆくと塩ビパイプが目に見えないレベルで少しづつ圧縮され、圧縮の限界で一気に伸びて、その分ベアリングを押し込むのではないかと思います

ちなみに圧入シロは3cmありますので、この「目がねレンチを何度か回す→バキーン ! 」 を6回ぐらい繰り返しました 最初はもとより、2回目以降のバキーンッも、事前にわかってはいるものの心臓に悪かったです ( 笑 )




バキーンッを6回繰り返して圧入完了したベアリング内輪 前回のようなたたき技なしに、まったくチカラを使わず処理できたのでヤレヤレでした プロのかたから見れば 「 なんじゃそりゃ 」 というレベルだと思いますが、アマチュアがめったにしない作業を簡単に、しかも極力やすいコストで進めるには、こんなところで良いのではないかと思います
なお、この作業はいったん始めると後戻りできませんから、ダストシールのセット忘れにご注意を !




さて、今度はベアリングの外輪をステアリングヘッドにはめ込みます 前回の作業では、上にある内輪を圧入する時の手法で進めたのですが、前回替えたニードルベアリングの内輪と今回のアンギュラ玉ベアリングの内輪では高さが違うので、ネジとワッシャの組合せでは圧入ができません ( 外輪を所定位置まで入れると、外輪の上端がステアリングヘッドの上のフチよりかなり下になります )  すでに抜いてある古いベアリング内輪をアテ物にして圧入することも考えましたが、ヘタすると古い外輪まで圧入されてしまい手におえなくなるのでこれは×と…
いろいろ考えた末に、最初だけハンマーで叩いてステアリングヘッド上端とツライチになるまで入れ、あとは大きめのマイナス貫通ドライバーを当ててそーっと叩いて入れました この時、ドライバーの刃先が滑ってボールとの接触面にキズを付けると大変ですので、この作業はけっこう緊張しました ( 画像は上ベアリングです )




続いて下ベアリングの外輪も同じ要領ではめ込みます 上は作業的にまだマシなのですが、下はジャッキアップしたバイクのステアリングヘッド下へもぐり込み、縄文時代の屈葬みたいなスタイルで作業しなきゃいけませんので大変です ( 汗 )  まぁ、これも快適なハンドリングのためですからガマンしましょう




ベアリングの内外輪がセットできたら、ボールの部分に給脂して組みたてます ニードルローラーベアリングでは、こうしてコロの部分を外して給脂できませんので、一番潤滑の必要な部分に直接アクセスできる構造というのはありがたいですね 画像はグリスを塗っている途中ですが、ボールが完全に埋まるぐらいまでコテコテにします アマチュア整備ですから、ここは 「 採算は度外視 」 「 回転抵抗より潤滑最重視 」 でいきます




ベアリングのボール部分を上下ともセットし、ステムナットを締めていきます いつもはキタコのピンスパナを使うのですが、どこへ片付けたかわからなくなったので、100均店ダイソーで自転車整備用の携帯式多目的工具@105円…を買って締めました 工具店でピンスパナなどを買うと2,000〜3,000円はすると思いますが、使用頻度が低く、他の使い道も限られるような工具は、税込み105円のもので十分だと思います

ちなみに、ステムナットの締めかたは、マニュアルによる方法ですと、
( 1 ) ステムナットを4.5kgfのトルクで締める
( 2 ) ステムを5〜6回左右にふってベアリングをなじませる
( 3 ) その状態からステムナットを1/4 〜 1/2回転戻して、ステムが重かったりガタが出ていないか確認する
・・・とあります このあたりはやってみて掴んでいただくしかないのですが、アンギュラ玉ベアリングの場合は、ガタが出ずにスムーズに軽く動くレベルから、いくらか締め込む方向に調整するとタイヤなどを付けた時の実走フィーリングがよくなるようです
まぁ最終的に、ここは実走してみて必要があれば最終調整を行うという方向でのぞまれると良いでしょう




トップブリッジを取付けてフロントフォークも仮付けしたうえ、トップナットを締めます この時、工具は右にいっぱいまで回しますので、ハンドルは ( というか、この段階でハンドルは付いていませんのでステムは ) 最初から右いっぱいに切っておくと良いでしょう また、この時トップブリッジ両脇にあるフォーク固定ボルトはまだ締めず、緩めておいて下さい ( トップナットを締めることで、トップブリッジ自体も高さが微妙に変わるため )




上の画像の 「 トップナットを締める工具 」 は、適当なものを持っていないので、グリップ部に穴の開いたハンドルに、コンクリート工事用の鉄筋の切れっぱしを通して締め付け工具にしました ちなみに、トップナットの二面幅は30mmで、指定締め付けトルクは6.6kgfです、かなりしっかり締めることになりますね

ここまで出来たらフロントフォークの突き出し量を調整してハンドルを付け直し、フロントタイヤやフェンダーをもとに戻して一連の作業は終了します


■ 実走チェックに移ります

今回変えたアンギュラボールベアリングは 「 ニードルローラーベアリングに比べハンドル操作感が軽くなる 」 というのがチャームポイントですので ( 笑 ) まずは 「 ガタが出ない程度にステムナットを軽く締め、その後トップナットを所定トルクで締める 」 で仕上げて試乗に出てみました 往復で約30kmの準ワインディングコースです

○ 最初は 「 おお、ハンドリングが軽い! さすが新品の玉ベアリングや 」 と悦にいっていたのですが、復路の途中ではブレーキング時など明らかにガタが出ています、どうやら 「 軽快感重視 」 しすぎで、締め付けが足らなかったようです ( 汗 )

○ 二回目試乗は、前回よりやや強くステムナットを締めて出発します やや強く、といっても、今回も軽快感重視です 結果は…やはり復路でガタが感じられ失敗です 

○ 三回目は、ステムナットをいったん目いっぱい締めました そこから円周上で約3mm戻しただけの状態です さらに、ステムナットが緩んだ時に目視で確認できるよう、ステムナットとトップブリッジの合わさり目に油性サインペンでマークを入れました、これで緩んでも速攻対応ができます( 笑 )
この仕様の結論は…走る前の取り回しですでにハンドルが重いです(^^; 走ってみても悪くはなく剛性感も出ているのですが 「 アンギュラボールベアリングはハンドリングが軽い 」 というオイシイ部分を明らかにスポイルしています …うーん、このあたり微妙ですね

■ 再調整の方法など

参考までに、組みつけて実走後に再調整する手順を記しておきますと、センスタで車体を立て前輪は浮かさずに接地した状態で、トップブリッジ横のフォーク固定ボルトを緩めて行います ( 前輪を浮かせると、フロント回りの重量が下ベアリング外輪とボール ( あるいはニードルローラー ) を離す方向にかかり、微妙な調整がしにくいです ) 




ここでハンドルをいったん外すのですが、ワイヤー類が付いたままのハンドルを前へ倒しておくとメーターに、後ろに倒しておくとタンクにキズが付きそうですので、私は調整中のハンドル保持のため、アパート駐輪場の梁にビニールのヒモを通して輪を作り、グリップ部を通して上から吊っています 作業スペース周辺の環境が許せば、この方法でかなり効率が上げられます




次に、トップナットを緩めてステムナットの締めかげんを調整します ここは本来的にピンスパナの出番なのですが、微調整はタンクを付けたままの作業 ( もちろん外してもかまいませんが ) ですのでピンスパナがかけにくい・・・そういう時は、ハンドルをどちらかへ一杯に切って空間の出来た側からアクセスするか、これは邪道なんですが、上の画像のように大きめのマイナス貫通ドライバーで少しづつ叩いて回すのがいいでしょう

けっきょく、ステムナットを三回目試乗の位置から円周上でさらに9mm戻したあたりで 「 ガタがなく、剛性感も感じられ操作も軽い 」 というポイントにあたりました アンギュラボールベアリングはニードルローラーベアリングに比べて、このおいしいポイントの許容範囲が広いと聞きますが、やはりベスト位置を探すのは 「 調整→実走→また調整→また実走… 」 でけっこうむずかしく感じました 
このあたり、プロメカニックや上級アマチュアなら一発でベスト位置を出すのでしょうが、私レベルではカットアンドドライの繰り返し・・・ 「 もう少し緩くすれば、きっと別世界が広がっているのでは? 」 と、もう止めておけばよかった調整をしてドツボにはまる、という展開の繰り返しでしたが ( 笑 ) 大変だったもののそれなりにノウハウも得られ、自分としてはめったに換えないステムベアリング交換に関して良い勉強ができたと思います

ちなみに、各パーツ精度の個体差や車体側のコンディションが千差万別ですから、皆さんのバイクもこうすれば、とは一概に申し上げられないのですが、少なくとも マニュアルにある ステムナットをいっぱいに締めてからの戻し量で 「 1/2回転 」 というのはアンギュラボールベアリングの場合、戻しすぎになると感じました 私見ですが、ベスト位置は1/4回転までの間にあると思いますので、そのあたりを意識して調整されると早くベスト位置にたどりつけるでしょう




↑・・サインペンで合わせマークだらけになったステムナットとトップブリッジ どのマークがどうだったのが、印を付けた本人もよく覚えていません ( 笑 )

--- ( 後日追記 ・・ 1 ) -------------------------------------------------------

「 ステムナットは一応この戻し量でええわ、ガタもなくハンドリングもまあまあやし 」 と思いながら、しばらく走っていたのですが、二週間ほどしたある日 「 もう少しだけステムナットを緩めてみるか…」 と思い、上の画像で、赤い線と黒い線が合さっている位置から、黒い線が円周上でもぅ2.5mmだけ右へ行く位置に緩めてみると、、何とたった2.5mmでも、これがウェルバランスと思っていた状態より、さらに良いハンドリングが得られました 前輪を上げてカラでハンドルを左右に振ってみた時の軽さはもとより、押し歩いた時点でも軽さをハッキリ体感でき、今のところは走行によるガタもでていません

結果として、アンギュラホールベアリングは、そこそこの軽さになら特別なノウハウなしに誰でもセッティングが出せますが、本当のボールベアリングの味を引出すには、ステムナットをmm単位で調整できるスキルがいることがわかりました、うーん、ナットの締め具合ひとつとっても本当に奥が深いですね ( 大汗

---- ( 後日追記 ・・ 2 )-------------------------------------------------------

ステムシャフトやステムナットの寸法に関するおたずねを何件かDMでいただいておりますので、参考までに実測数値をUPしておきます 治具などを作る時の参考になさって下さい

数値は全てmm GV75AのGSF1200実測値

ステムシャフト



ステムナット ( 画像の状態が取り付け時の上側 )



■ ここまでお読みいただきありがとうございました あと 「 この際だから 」 と一緒にやった作業をご紹介しておきますと、、



フロントフォークオイルの交換を同時に行いました 三叉部分を外すのですから、当然にフロントフォークをはずすことになります フォークオイルもしばらく換えていませんでしたので、ここはデフォルトで交換ですね
ちなみに、オイルは南海部品本店に並んでいたものの中で一番安かった、ヤマハ純正フォークオイル ( #15 ) を使いました




同じくオイル交換ということで、エンジンオイルとオイルフィルターも交換しておきました 季節替わりの交換ということもあるのですが、このあたりは 「 勢いでやった 」 というのが正直なところです ( 笑 )




オイル交換のついでに、ドレンボルトをBandit用純正部品のマグネットが仕込まれたタイプに変更しました 社外パーツで鉄粉吸着マグネット付きの製品というと、アルミ製で2,000円ぐらいするところ、こちらは純正部品で168円です これも勢いで交換ということですね ( 笑 ) ちなみに、GSF用ドレンボルトは工具をかける二面幅が17mmですが 、Bandit用は21mmに変更されていますので、交換される方は工具のご準備を、、


いろいろ手間もかかりましたが、バイクシーズン入り前の整備ということで、コンディションもつかめ、また勉強にもなりました 当面は新装なったステムベアリングで気分の良いセルフステア感を楽しみたいと思います




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